2014年11月26日、明治大学大学院情報コミュニケーション研究科主催、当会協力(コーディネート)という形で、シンポジウム第5弾を開催させて頂きました。
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2014年の前半を大きく騒がせたPC遠隔操作事件は、片山祐輔氏のあっけない自白によって真犯人が判明しましたが、実際の警察検察の捜査実態は、ネットを知らないがゆえの問題点の多いものであり、ある意味では、ネットユーザーは誰でも犯人にされうるようなものでした。
そこで、今回、「デジタル犯罪における『証拠』の意味」とマスコミが犯人に利用されていたという前例のない事例を前半のテーマに、そして、後半は、そもそも被害者が他殺でないことが明らかになったことによって、再審になろうとしている「本庄トリカブト事件」で、マスコミが果たした役割と、目撃証言だけで有罪死刑を宣告された事件において、その目撃者の記憶が「捏造」される恐ろしさをテーマに語り合うシンポジウムを開催いたしました。
まず、最初の登壇は、PC遠隔操作事件の特別弁護人を務めて下さった野間英樹さんから。野間さんは弁護士ではありませんが、この事件については欠くべからざるITの専門家として、はじめて、弁護団に加わった方です。野間さんから事件の概要を改めてお伺いすると共に、続いて、その筋では著名なITプログラマであり、元Linux協会会長の生越昌己さんにお話しして頂きました。
犯人片山祐輔氏が保釈中に「真犯人メール」を送ってアリバイ工作をしようと携帯を埋めた瞬間を、行動確認していた警察に目撃され、さらにそれが報道で明らかになって逃亡の後、すべてを自白したことで急転直下の解決を見たPC遠隔操作事件ですが、実際に、片山氏が否認していた間に検察が証拠として出していたファイルスラックの痕跡などは、専門家から見れば到底証拠とはいえないもので、実を言いますと、この事件が否認のままで続いていた場合、それをもって有罪の証拠とするにはかなり無理があるものであったという問題。
検察が取調べの可視化に応じて、まともな取り調べをやっていたら、もっと早く、片山氏を自白に追い込むことができていたかもしれないのに、取り調べを行わない状態で、中途半端なリークをマスコミに対して行ったために、かえって、片山氏が、検察が決定的証拠を握っていないことに気づいてしまって否認の自信を強めさせ、そのまま公判まで行ってしまったという事件だったことが、このPC遠隔操作事件について、すべての公判や記者会見の他、本人と何度も接見をするなど、ずっとウォッチをしてこられた神保哲生氏の指摘などで明らかになっていきます。
そして、後半の本庄トリカブト事件。
トリカブトで毒殺されていたはずの被害者が、そもそも毒殺ではなく溺死であることが鑑定で新たに明らかになったことから、再審請求となっているこの事件では「記憶の捏造」が最大のテーマです。つまり、被疑者で有罪判決を受けた八木茂被告は、たった1人の彼の愛人だった女性の証言だけで、死刑判決を受けていたわけですが、その証言そのものが、「思い出さないと全員死刑になる」と脅された愛人女性が、検察官の誘導によって巧妙に「存在しない記憶」を「徐々に取り戻していく」様は、まさにエリザベス・ロフタスの指摘した「植え付けられた虚偽の記憶」であることが高野隆弁護士から訥々と指摘されていきました。
当日の動画は以下でご覧になれます。(一部のみ)